名曲解説:パガニーニの《24のカプリース》

ニャンチーニ教授

《24のカプリース》はニコロ・パガニーニが作曲した24曲からなる伴奏無しのバイオリン独奏曲じゃ。パガニーニ初の出版作にして、もっとも有名な代表作じゃな

概要

パガニーニはバイオリンの超越した演奏技術を得る為に「悪魔に魂を売り渡した」とまでいわれた、超絶技巧のバイオリニスト。そんな彼の代表作である《24のカプリース》は、数あるバイオリン曲の中でも最高難易度に分類される楽曲です。

またこの曲は、パガニーニの代表作であるとともに、彼が初めて出版した曲でもあります。

ニャンチーニ教授

ピアノと違いバイオリンは音を正確に出すことさえ難しい楽器じゃ。その楽器でさらに超絶技巧を要求されるこの作品は、演奏技術が進化した現代においても、完璧に演奏できるバイオリニストはそうそうおらんぞ
初の出版作が代表作って珍しいパターンですね

クラーニャ

作曲の経緯

《24のカプリース》は1800年から1810年頃にかけて、パガニーニの故郷ジェノバで作曲されたとみられています。ただ資料があまりないので、なぜこの曲を作曲したのか、動機はわかっていません。

この曲が出版されたのは作曲から10年ほど経過した1820年。もともと《24のカプリース》は別々の曲だったようですが、出版の際に24曲がまとめられました。

初版譜には「alli artisti(すべてのアーティストへ)」と献辞が記載されています。

ちょっと意味深な献辞ですね。何か意図があったのかな?

クラーニャ

1800年、そのころ日本では…
《24のカプリース》の作曲が始まった1800年、この年は伊能忠敬が日本地図製作のための初めての測量を蝦夷地(現在の北海道)で行った年です。当時、伊能忠敬は56歳。以後18年間、72歳で亡くなるまで日本各地の測量を行いました。

またアメリカでは、1792年から行われていたホワイトハウスの建設が終わり完成した年でした。完成したホワイトハウスは14年後にイギリス軍の焼き討ちで外壁を残して消失したものの、外観を変えずに修復され現在に至っています。

曲名の由来・意味

カプリースとはフランス語で「気まぐれ」を意味する言葉で、音楽ジャンルの一つです。日本語では「奇想曲」、イタリア語では「カプリッチョ」と呼ばれています。

しかし音楽ジャンルの一つと言ったものの、カプリースに使われる技法や形式があるわけではありません。むしろ形式に縛られない自由な様式で作曲された作品がカプリースに分類されます。

自由に生きたパガニーニにピッタリじゃないですか!

クラーニャ

《24のカプリース》には、それまでの形式に囚われない様々な音楽が用いられています。

舞曲や行進曲のリズム、バロック音楽やジプシー音楽の影響、ヴェネツィアの舟歌からの引用やギターのトレモロ奏法の模倣などがその例です。

ニャンチーニ教授

逆にパガニーニが他の曲で多用したハーモニクス奏法が、この曲では使われていないことも面白いとこじゃな

演奏難易度

《24のカプリース》の演奏難易度は以下の通り。ドイツの楽譜出版社ヘンレの難易度を基にしています。

  • 難易度「A」ランク:第13, 14, 20番
  • 難易度「S」ランク:第9, 15, 16番
  • 難易度「SS」ランク:第4, 8, 10, 18, 19, 21, 22, 23番
  • 難易度「SSS」ランク:第1, 2, 3, 5, 6, 7, 11, 12, 17, 24番
難しい曲っていっても、わりと難易度のばらつきがありますね

クラーニャ

曲の視聴

では演奏を聴いてみましょう。

この曲の聴きどころといえば、やはり最終曲の第24番クワジ・プレスト。全曲をまとめるにふさわしい華々しい変奏曲で、単独で演奏されることも多いです。

PAGANINI: 24 Caprices – Antal Zalai, violin – classical music

ニャンチーニ教授

そもそもこの曲は全曲をまとめて聴くと1時間以上かかってしまう。時間がない方は第24番のみを聴いてみるといいじゃろう。それだけでもこの作品の良さは十分理解できるはずじゃ
Paganini Caprice No.24 -Ayako Ishikawa-

演奏難易度も24番が一番難しいし、まさに最後にふさわしい曲ですね

クラーニャ

関連曲

《24のカプリース》の超絶技巧と音楽性は後世の作曲家に大きな影響を与えました。特にその影響を受けたのがフランツ・リス卜です。

リストがパガニーニの生演奏を聴いたのは21歳の時。そのときリストは感激のあまり「(私は)ピアノのパガニーニになる!」と叫んだといわれています。

そしてリストは1838年に《24のカプリース》の第1、5、6、9、17、24番と、同じくパガニーニが作曲したバイオリン協奏曲の一部をピアノ曲に編曲(大幅にアレンジ)し、『パガニーニによる超絶技巧練習曲』を完成させました。

VICTOR MERZHANOV – Liszt. Six Grandes Études de Paganini (1851), S.141

またリスト以外にも、ブラームスが『パガニーニの主題による変奏曲』を、

Brahms – Paganini Variations Op. 35 (I-II)

ラフマニノフが『パガニーニの主題による狂詩曲』を作曲しています。

Rachmaninoff plays his Rhapsody on a Theme of Paganini

ニャンチーニ教授

これらはどれも『24の奇想曲』の最終曲をピアノ曲に編曲したものじゃ。後世の作曲家たちが、いかにこの曲に魅せられていたかがわかるじゃろう
ショパンみたいに華美な超絶技巧を嫌う作曲家もいたけど、やっぱり難しい曲はカッコイイですよね

クラーニャ