名曲解説:グノーのアヴェ・マリア

《グノーのアヴェ・マリア》はシャルル・グノーが1859年(41歳ころ)に作曲?した歌曲です。

バッハの《平均律クラヴィーア曲集 第1巻『前奏曲第1番ハ長調』》のメロディーにグノーがアヴェ・マリアの歌詞をつけたものなので、グノーの完全なオリジナル作品とは言えません。どちらかといえば《バッハのアヴェ・マリア》と言ったほうがいいかもしれません。

グノーの作品と言えるか微妙な《グノーのアヴェ・マリア》ですが、皮肉なことにグノーの数ある作品の中で、最も有名な作品の一つになっています。

ニャンチーニ教授

グノーの作品は他にもオペラ《ファウスト》やバチカンの国歌《賛歌と教皇の行進曲》などが有名じゃな
歌付きの曲に定評のある作曲家なんですよね、グノーは

クラーニャ

作曲の経緯

《グノーのアヴェ・マリア》の作曲はファニー・メンデルスゾーンの助言がきっかけになったと言われています。

ファニー・メンデルスゾーンは有名な作曲家フェリックス・メンデルスゾーンの姉。当時は有名な作曲家でピアニストでした。

グノーよりひと回り年上だったメンデルスゾーンは、親交のあったグノーにピアノ研究の教科書としてバッハの《平均律クラヴィーア曲集 第1巻》を勧めたといいます。

そしてメンデルスゾーンはグノーに思い浮かんだメロディーを《前奏曲第1番ハ長調》に重ねるように促しました。

実際にグノーが《アヴェ・マリア》を作曲したのは、その助言から月日がだいぶたった1859年。ファニー・メンデルスゾーンが亡くなってから12年後のことです。

ニャンチーニ教授

ファニー・メンデルスゾーンは一部の作品を弟フェリックスの名で出版しておる。フェリックス・メンデルスゾーンの12の歌曲作品8と作品9がそれじゃ。また、弟の作品で有名な《無言歌》を考案したことでも有名じゃな

曲名の意味

「アヴェ・マリア」とは「こんにちは、マリア」または「おめでとう、マリア」を意味する聖母マリアへの祈りの文です。文章は決まっていて、違いは言語毎の訳だけです。

なのでこの曲の歌詞もグノーが考えたものではありません。《グノーのアヴェ・マリア》にはラテン語の歌詞が用いられています。

歌詞は同じだから、それぞれの作曲家はメロディーだけで差別化するんですね

クラーニャ

曲の視聴

Bach/Gounod Ave Maria – Laura Ullrich

Ave Maria, gratia plena,
Dominus tecum,
benedicta tu in mulieribus,
et benedictus fructus ventris tui Jesus.
Sancta Maria mater Dei,
ora pro nobis peccatoribus,
nunc, et in hora mortis nostrae.
Amen.

アヴェ、マリア、恵みに満ちた方、
主はあなたとともにおられます。
あなたは女のうちで祝福され、
ご胎内の御子イエスも祝福されています。
神の母聖マリア、
わたしたち罪びとのために、
今も、死を迎える時も、お祈りください。
アーメン。

それにしてもバッハの作品とキリスト教の歌詞は良く合いますね。さすが教会のオルガニスト!

クラーニャ

豆知識:バッハ自身が《アヴェ・マリア》を作曲したら、違う歌詞になっていた?

バッハはキリスト教プロテスタントのルター派に属していました。ルター派とはバッハが生まれる150年以上前に起きた宗教改革で生まれた宗派です。ラテン語で書かれた聖典をドイツ語に翻訳して使うのが特徴の一つでした。

その流れでルター派に属する作曲家は宗教音楽を書くとき、ドイツ語で作曲するのが基本でした。バッハが作曲した宗教曲もほぼすべてがドイツ語で書かれています。

もしバッハが《前奏曲第1番ハ長調》にアヴェ・マリアの歌詞を付けて曲を作っていたら、そこに付けられる歌詞はラテン語ではなくドイツ語になっていたでしょう。

ニャンチーニ教授

ドイツ語は固く聞こえることで有名じゃ。今とは違う印象の曲になってしまうな