名曲解説:リムスキー=コルサコフの《熊蜂の飛行》

《熊蜂の飛行》はニコライ・リムスキー=コルサコフが1900年に作曲したオペラ《サルタン皇帝》の第三幕で演奏される楽曲です。

もとは管弦楽曲ですが、ピアノやバイオリン用に編曲されたものがよく演奏されています。

『熊蜂の飛行』って演奏者のテクニックを披露する曲ってイメージがありますね

クラーニャ

ニャンチーニ教授

たしかにそういう目的で演奏されることの多い曲じゃな

原作はロシアを代表する作家アレクサンドル・プーシキンの同名の作品。オペラの題材としては珍しく、ファンタジーちっくでハッピーエンドで終わる内容になっています。

オペラってたいがい悲劇で終わりますもんね。確かに珍しいかも

クラーニャ

作曲の経緯

《サルタン皇帝》の原作を執筆したアレクサンドル・プーシキンはロシアの文学を語るにおいて非常に重要な作家です。曾祖父が黒人という当時では珍しい出自を持っている人物でもありました。

そのプーシキンの生誕百年祭が1900年にモスクワの劇場で行われることとなります。リムスキー=コルサコフはそこで上演するオペラを作曲することになり、結果できあがったのがオペラ《サルタン皇帝》でした。

ニャンチーニ教授

ちなみにプーシキンは1837年に亡くなっておる。享年37歳じゃ。かなり短命じゃな。

死因は決闘で受けた傷が原因じゃった。作家とは思えん死にかたじゃのう

たしか一生の内に何度も決闘をしてるんですよね。血気盛んすぎますよ…

クラーニャ

曲名の意味

《熊蜂の飛行》という題名はオペラの中でこの曲が演奏されるシーンを意味しています。

ではどんなシーンでこの曲が演奏されるか、オペラのあらすじを簡単に見てみましょう。

ロシアの南部クリミア半島の向かい側、タマン半島にトムタラカンという都市がありました。

この地を治めるサルタン皇帝は自分の妃を探していました。

妃の候補は3人姉妹。皇帝はこの中から1番末の娘を選びます。

嫉妬した2人の姉は、皇帝にあることないこと吹き込んで、妃とその息子グヴィドン王子を追放させました。

王子は追放された地で成長し、立派な若者になります。

あるとき王子は1羽の白鳥を助けました。白鳥は王子にいつか恩返しをすると伝え、飛び立ちます。

夜が明けると妃と王子は不思議な島、ブヤン島に流れ着きます。そこで島の民に懇願され、王子は島の王となります。

一方、サルタン皇帝は3人の船乗りから王子が島を治めていることを聞きだしました。

妃の2人の姉は、自らの悪行が発覚するのを恐れ、必死に嘘を覆い隠そうとします。

そこへ白鳥の魔法により蜂に変身した王子が現れ、2人の姉を撃退します。

真実を知った皇帝は妃と王子を迎えに行きました。

王子が助けた白鳥は王子の愛によって魔法が解け、美しい王女に戻ります。

《熊蜂の飛行》が演奏されるのは太文字で強調した部分。主人公の王子が蜂に変身して悪者を撃退するシーンです。

物語を見ればわかりますが、このオペラ一番の見せ場ですね。

オペラのハイライトで演奏する曲だから、こんな華やかなんですね

クラーニャ

曲の視聴

《熊蜂の飛行》はもともとオペラの一部なので、オーケストラで演奏されます。

KATICA ILLÉNYI – Flight of the Bumblebee

その難易度の高さから演奏テクニックを披露するための曲としても人気がありますね。

一番メジャーなのはピアノ独奏です。

Alberto Lodoletti plays the Flight of the Bumble-Bee by Rimsky-Korsakov piano version by Rachmaninov

他にもバイオリンや木琴、ギター、フルートなど様々な楽器で演奏されています。

これを弾けたら気持ちいいだろうな!

クラーニャ

豆知識:本当はクマバチじゃない?

《熊蜂の飛行》の原題は《Полет шмеля(Flight of the Bumblebee)》。この中のшмеля(Bumblebee)が蜂の名前ですが、実はこれを日本語に訳すと違う蜂の種類になります。

その蜂とは「マルハナバチ」。クマバチより少し小さく、姿はミツバチに似ている蜂です。

マルハナバチと聞くとあまりピンとこない方も多いでしょう。日本にも生息していますが、あまりメジャーではありません。

しかし西欧では非常に身近な蜂として知られています。牧草をはじめとして、様々な植物の受粉を手助けしてくれることから親しまれているようです。

またマルハナバチはミツバチ科なので、蜂蜜を作る習性もあります。くまのプーさんが持つハチミツ壺の周りを飛ぶ蜂はマルハナバチといわれています。

ニャンチーニ教授

マルハナバチに親しみのない日本人が理解できるように、一番雰囲気の似ているクマバチを訳に選んだのじゃろうな
日本のメジャーな蜂といえばミツバチ、スズメバチ、クマバチかな?

クラーニャ