名曲解説:ベートーベンの《エリーゼのために》

ニャンチーニ教授

このページではベートーベンの『エリーゼのために』を解説していくぞ

『エリーゼのために』について学ぼう!

Beethoven "Für Elise" Valentina Lisitsa Seoul Philharmonic

『エリーゼのために』はベートーベンが1810年(39歳)に作曲したピアノ曲です。短い曲ですが、誰もが一度は耳にしたことがるピアノの有名曲です。

この曲は題名にあるとおり「エリーゼ」という女性のために作られたと考えられてきました。題名にそうあるのですから、当然のことです。

しかし不思議なことに、ベートーベンの周りに「エリーゼ」という名の女性がいた記録が見つかりませんでした。なのでエリーゼがどんな人物なのか、長い間謎に包まれていました。

そんな中、1923年にドイツの音楽学者がある論文を発表します。それによれば、この曲の題名にある女性の名前は「エリーゼ」ではなく、「テレーゼ」であるという内容でした。

ベートーベンは悪筆(字が汚い)で、彼の書いた字は他人には読めないことが多くあったようです。なのでベートーベンが書いた楽譜を見た人が、「テレーゼ」と書いてある部分を「エリーゼ」と読んでしまった可能性が高いとの説です。

では、この曲はテレーゼという名の女性に贈られたということですか?

クラーニャ

ニャンチーニ教授

その可能性が高いのじゃな

「テレーゼ」という名の女性の正体ですが、テレーゼ・マルファッティがその人とみられています。この女性はウィーンの商家の生まれで、1810年頃にベートーベンと出会い仲良くなったようです。

ベートーベンはこの女性に惚れていたようで、足しげく彼女の家に通い、ついには求婚を申し出ています。残念ながら振られてしまいましたが。

ベートーベンが1810年の4月もしくは5月頃にテレーゼに宛てた手紙が残っているので、ベートーベンには申し訳ないのですが見てみましょう。

いざさらば、敬愛するテレーゼ。あなたにこの人生にあらゆる素晴らしい、美しい事物のあらんことを。私のことを心に留めておいてください。

私よりもあなたに明るい、幸福な人生を望める者などおりません。

万一、あなたがそんなことを気にも留めていなかったとしても。

これは手紙の最後の部分なのですが、私があなたを一番幸せに出来ると言っています。この手紙は恋文ではなかったようですが、ベートーベンのテレーゼに対する想いが見て取れます。

そもそも『エリーゼのために』の楽譜は、テレーゼ・マルファッティの持ち物の中から見つかったものです。これらの情報からして、「テレーゼ」の正体はテレーゼ・マルファッティが有力とみてよいでしょう。

テレーゼ・マルファッティ

テレーゼ・マルファッティ

月光ソナタ』の時もそうですけど、ベートーベンって叶わない恋が多いですよね

クラーニャ

ニャンチーニ教授

それにテレーゼはベートーベンから求婚をうけたあと、すぐに他の男性と結婚しておるしな。『月光ソナタ』のグイチャルディとほぼ同じパターンじゃ

時は経って2010年、「エリーゼ」の正体に新説が浮上します。ドイツの音楽学者が発表した説で、エリザベート・レッケルという女性がエリーゼの正体というのです。

このエリザベート・レッケルという女性は、ベートーベンと親交のあった友人の妹で、生前のベートーベンと親しかったそうです。

そして説の根拠としてあげられているのが、ウィーンの教会で見つかった彼女の洗礼記録でした。これにはエリザベートのことを「エリーゼ」と記しており、この女性は生前エリーゼと呼ばれていた可能性があるとのことです。

結局のところベートーベンが書いた楽譜が残っていないので、真実は永遠にわからないのですが、この女性が「エリーゼ」の可能性もあるのです。

エリザベート・レッケル

エリザベート・レッケル

うーん、謎は深まるばかりですね

クラーニャ

一つ注意です。

ベートーベンが1809年に作曲した作品で、ピアノソナタ第24番『テレーゼ』があります。ここにもテレーゼがでてくるのですが、このテレーゼはテレーゼ・マルファッティのことではなく、テレーゼ・フォン・ブルンスヴィック伯爵令嬢をさしています。

詳しくはピアノソナタ第24番の項で解説しますが、混同しないように注意が必要です。

テレーゼ・ブルンスヴィック

テレーゼ・ブルンスヴィック

確かに間違えちゃいそうですね

クラーニャ

ニャンチーニ教授

作曲した年も1年しか変わらんからな。同じに見えてしまうのもしょうがないじゃろう