名曲解説:ベートーベンのピアノソナタ第14番『月光』

ニャンチーニ教授

クラシックの名曲案内…
今回はベートーベンのピアノソナタ第14番『月光』を紹介します!

クラーニャ

楽曲データ
曲名ピアノソナタ第14番『月光』
調性嬰ハ短調
作曲者ルートヴィヒ・バン・ベートーベン
作曲年1801年(30歳)
出版年1802年3月
作品番号Op.27-2
演奏時間約15 – 16分
ジャンルピアノ曲 > ピアノソナタ

作曲家の紹介

ルートヴィヒ・バン・ベートーヴェン

ルートヴィヒ・バン・ベートーベン(1770年12月16日頃 – 1827年3月26日)はドイツ・ボン出身の作曲家。音楽史上もっとも有名な作曲家の一人。革新的な楽曲をいくつも作り、後の作曲家に与えた影響は測りしれない。

20代後半より難聴を患い、彼がのこした名曲の数々は、耳が聞こえないなか作曲された。

ニャンチーニ教授による曲の解説

ニャンチーニ教授

ベートーベンのピアノソナタ第14番『月光』がどんな曲か、簡単に解説していくぞ

作曲は失恋がきっかけ?

『月光』の作曲は、ある女性との失恋がきかっけの一つになったといわれている。その女性の名はジュリエッタ・グイチャルディ。

『月光』を作曲する少し前、ベートーベンはグイチャルディのピアノ指導を受け持つことになった。彼女はかなりの美人で、その美貌は上流社会でも有名だったようだ。

グイチャルディは当時17歳、ベートーベンと14歳もの歳の差があったのだが、彼はすぐにこの女性の虜になってしまった。

ベートーヴェンの持ち物から発見された グイチャルディと思われる女性の肖像画

ベートーヴェンの持ち物から発見された グイチャルディと思われる女性の肖像画

ベートーベンはロリコンだった!?

クラーニャ

ニャンチーニ教授

現代社会なら通報案件じゃが、当時のヨーロッパではこのくらいの歳で結婚するのはよくあることじゃ。ベートーベンがロリコンというわけではないぞ

ベートーベンはグイチャルディに出会ったあと、彼女に対しての想いを友人への手紙でこう綴っている。

私の人生はいま一度わずかに喜ばしいものとなり、私はまた外に赴いて人々の中に居ます。

この2年の間、私の暮らしがいかに侘しく、悲しいものであったか信じがたいことでしょう。この変化は可愛く、魅力的な少女によってもたらされました。彼女は私を愛し、私も彼女を愛しています。2年ぶりに幾ばくかの至福の瞬間を謳歌しています。

そして生まれて初めて結婚すれば幸せになれると感じているのです。

しかし不幸にも彼女は私とは身分が違い、そして今は、今は結婚することなどできやしないのです。

文をみればわかるが、残念ながらベートーベンとグイチャルディとの間には身分の差があった。ベートーベンは平民、それに対してグイチャルディは伯爵令嬢。当時の世相では結婚はおろか、付き合うことも難しかったのだ。

ベートーベンはグイチャルディとの叶わない恋を胸に秘めながら、この曲を作曲したといわれている。そしてこの曲を彼女に捧げたのだった。

ニャンチーニ教授

ベートーベンの生きた時代、身分の差は越えられない壁だったはずじゃ。さぞ悔しかっただろうな
グイチャルディの生涯
ヴェンゼル・ロベルト・フォン・ガレンベルク

ベートーベンが惚れた女性と結婚した男
ヴェンゼル・ロベルト・フォン・ガレンベルク

ジュリエッタ・グイチャルディはガリツィア・ロドメリア王国(現在のウクライナ)出身で、両親と共にイタリアのトリエステを経由してウィーンに移り住んできた貴族だった。

ベートーベンは出会ってすぐに彼女に惚れ、『月光』を献呈したが、そのあとすぐに彼女は作曲家で爵位を持っていたヴェンゼル・ロベルト・フォン・ガレンベルクと婚約をしている。

そして結婚式が行われたのは1803年11月14日、彼女はベートーベンの手が届かない場所に行ってしまった。

グイチャルディはその後ナポリに移り住み、約20年間をイタリアで過ごした。最後はウィーンで亡くなっている。

『月光』を捧げたあと、すぐに婚約しちゃったなんて、ベートーベンかわいそう……

クラーニャ

ニャンチーニ教授

心中複雑だったじゃろうな

『月光』の名前の由来

『月光』という題名、これはベートーベンが付けたものではない。この題名を考えたのはベートーベンと同時代に活躍していたドイツの音楽評論家で詩人のルートヴィヒ・レルシュタープ。

ベートーベンの死後、彼がこの曲の第1楽章を「スイスのルツェルン湖の月光の波に揺らぐ小舟のよう」と表現したことによって、『月光』という愛称が定着するようになった。

ちなみにレルシュタープよりも前、ベートーベンが生きている頃に弟子のカール・ツェルニーがこの曲について「夜景、遥か彼方から魂の悲しげな声が聞こえる」と述べている。

レルシュタープと似たような見解ですね

クラーニャ

ニャンチーニ教授

じゃが弟子のこの見解を、ベートーベンは快く思っていなかったといわれておるぞ
ルートヴィヒ・レルシュタープ

「まるでスイスのルツェルン湖の月光の波に揺らぐ小舟のようだ!!」
by ルートヴィヒ・レルシュタープ

ベートーベンはなぜ不快に思ったんですか?

クラーニャ

ニャンチーニ教授

失恋した時の感情を「魂の悲しげな声」と表現されて、恥ずかしかったのではないじゃろうかのう

本当の名前は『幻想曲風ソナタ』

今でこそ『月光』の通称で知られておるピアノソナタ第14番だが、この曲にはもともと『幻想曲風ソナタ』という題名が付けられていた。

幻想曲とは自由な発想で作られた曲に付けられる名前で、事実この曲もピアノソナタの形式にとらわれない自由な形で作曲されている。

『月光』はピアノソナタ第13番と一緒に出版されたが、第13番にも同じように『幻想曲風ソナタ』と題名が付けられている。

もちろん第13番も『月光』と同じくピアノソナタの形式にとらわれない作品になっている。

月光ソナタ初版譜の表紙

月光ソナタ初版譜の表紙
『幻想曲風ソナタ』(”Sonata quasi una Fantasia”)と書かれている

さすがベートーベン、チャンレンジ精神が旺盛ですね

クラーニャ

ニャンチーニ教授

ベートーベンの作品は難聴のスランプを脱してからが本番じゃが、このころでも十分新しい試みをしていたのじゃな

楽曲構成

  • 第1楽章
    アダージョ・ソステヌート / アダージョ(ゆるやか)より少しテンポを抑え気味に
  • 第2楽章
    アレグレット / 快活にやや速く
  • 第3楽章
    プレスト・アジタート / 極めて速く興奮して

曲を聴いてみよう

ニャンチーニ教授

そろそろベートーベンのピアノソナタ『月光』に興味が湧いたころじゃろう。実際に曲を聴いてみるといいぞ
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ニャンチーニ教授

自分で演奏する方のために、無料の楽譜も紹介しておくぞ
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クラーニャ