名曲解説:ラヴェルの《亡き王女のためのパヴァーヌ》

このページではラヴェルの『亡き王女のためのパバーヌ』を解説していきます!

クラーニャ

『亡き王女のためのパバーヌ』について学ぼう!

Bertrand Chamayou records Ravel's Pavane pour une infante défunte (Pavane for a Dead Princess)

『亡き王女のためのパバーヌ』はモーリス・ラヴェルが1899年(24歳ごろ)に作曲したピアノ曲です。『逝ける王女のためのパバーヌ』や『死せる王女のためのパバーヌ』などと訳されることもあります。

「亡き王女」のモデルと言われているのが、17世紀のスペイン王女マルガリータ。ラヴェルは彼女の肖像画をルーヴル美術館でみて、インスピレーションをえたといわれています。

マルガリータ王女はスペインの王家に生まれ、神聖ローマ帝国の皇帝に嫁いだ女性。6人もの子供をもうけ、21歳の若さで亡くなりました。17世紀スペインの宮廷画家ディエゴ・ベラスケスが彼女をモデルにした絵画が複数枚残されています。そのほとんどは幼少期を描いたものです。それらはヨーロッパ各地の美術館に所蔵されており、ラヴェルが見た絵画もその一つです。

ラヴェルが見たマルガリータ王女の肖像画<br>ルーブル美術館所蔵、ディエゴ・ベラスケス画

ラヴェルが見たマルガリータ王女の肖像画
ルーブル美術館所蔵、ディエゴ・ベラスケス画

ニャンチーニ教授

ただ、これはあくまで数ある説の一つに過ぎん。確たる証拠があるわけではないから、そのへんは注意してくれ

この曲のタイトルには「亡き王女」とありますが、これは亡くなってしまった王女を偲(しの)んでいるわけではありません。ラヴェルはこの曲を、「亡くなった王女を追悼する曲」ではなく、「昔、スペインの宮廷で小さな王女が踊ったような曲」と語っています。この曲のタイトルを正しく訳すなら「いにしえの王女のためのパバーヌ」が近いかもしれません。

確かにこのタイトルだと、亡くなった王女を悲しんで作曲した曲ってかんじちゃいますよね

クラーニャ

ラヴェルは、『ボレロ』や『スペイン狂詩曲』など、スペインを題材にした作品を数多く残しました。

なぜラヴェルはフランスの作曲家でありながら、自分の作品にスペインの要素をふんだんに盛り込んだのか?それはラヴェルの母がスペイン人であったことが大きく影響しています。

ラヴェルの故郷、シブールの場所

ラヴェルの故郷、シブールの場所

ラヴェルの故郷はスペインとの国境近くの港町シブール。母マリーはこの町の近くで生まれたスペイン人でした。一方で父のジョセフはスイスの出身。この父は発明家で、自分で自動車のエンジンを完成させてしまうような人物だったようです。ただ、父が発明に私財をつぎ込んだため、一家は貧乏でした。

そんな貧しかったラヴェルの幼少時代、母は苦しい生活にもめげず、いつもスペイン民謡を口ずさんでいました。ラヴェルはこの母を深く愛しており、母が亡くなった時はショックのあまり3年間も新作が書けなくなってしまったほどでした。ラヴェルは母の死後、友人に「日ごとに絶望が深くなっていく」と手紙を書いています。

ラヴェルの両親

ラヴェルの両親

『亡き王女のためのパバーヌ』はラヴェルがパリ音楽院の学生だった頃に発表された。

この曲の古き良き時代を懐かしむかのような、感傷的な曲調は、幼いころの母との想い出を表しているのかもしれない。

幼い子供の絵を見て、自分の小さい頃の思い出がよみがえったのかもしれませんね

クラーニャ

ラヴェルの代表作の一つに数えられる『亡き王女のためのパバーヌ』。この曲は発表時からかなり人気をえていました。しかしラヴェルは人前でこの曲を決して褒めませんですた。ラヴェルはこの曲を作曲後「大胆さに欠ける」や「かなり貧弱な形式」と批判的なコメントを残しています。

しかし晩年、交通事故で記憶障害となったラヴェルはたまたまこの曲を耳にし、「この素晴らしい曲は誰の曲だ?」と口にしたそうです。口では批判していたものの、心の底ではこの曲を大切にしていたのです。

へぇー、でもなんでラヴェルはこの曲に対して批判的な態度をとったんですか?

クラーニャ

ニャンチーニ教授

それはこの曲が音楽的に面白味がないからじゃろう。特に目新しい手法が使われているわけではないからな。この曲は『水の戯れ』と一緒に初演されたのじゃが、こちらは「水」を音で表現した曲。当時かなり斬新じゃった。若き日のラヴェルは、斬新さに欠ける『亡き王女のためのパバーヌ』を作曲家として受け入れられなかったのじゃな。

最初ピアノ曲として作られた『亡き王女のためのパバーヌ』ですが、作曲から10年以上後にラヴェル自身によってオーケストラ用の曲に編曲されました。

ラヴェルといえば「オーケストレーションの天才」や「管弦楽の魔術師」と言われた人物。ムソルグスキーの『展覧会の絵』は、ラヴェルの編曲によって有名になったほどです。

そんなラヴェルが手掛けたオーケストラ版の『亡き王女のためのパバーヌ』は、ピアノ曲と同様に人気があります。

Ravel: Pavane pour une infante défunte · Alessandro Crudele

ピアノ曲もいいけど、オーケストラ版のほうは音に厚みがあって、こちらも魅力的ですね!

クラーニャ

ニャンチーニ教授

さすがラヴェル!といえる曲じゃな