名曲解説:ドビュッシーの《牧神の午後への前奏曲》

このページではドビュッシーの『牧神の午後への前奏曲』を解説していきます!

クラーニャ

『牧神の午後への前奏曲』について学ぼう!

『牧神の午後への前奏曲』はドビュッシーが1892年から1894年(30歳から32歳)にかけて作曲した管弦楽曲(オーケストラで演奏する曲)です。ドビュッシー初期の作品で、ドビュッシーの名が世に知られるきっかけを作った出世作とされています。

牧神とはギリシャ神話に登場する半獣神「パーン」のことです。『牧神の午後への前奏曲』はこの神を扱った詩人ステファヌ・マラルメの作品『半獣神の午後』に感銘を受けて作曲されました。

この詩は「夏の昼下がり、好色な牧神が昼寝のまどろみの中で官能的な夢想に耽る」という内容で、牧神がニンフ(妖精)に欲情する様子を描いています。

エドゥアール・マネが描いた『半獣神の午後』の挿絵

エドゥアール・マネが描いた『半獣神の午後』の挿絵

ニャンチーニ教授

ドビュッシーは、この曲を作曲以降も歌曲集『ビリティスの3つの歌』、無伴奏フルートのための『シランクス』、ピアノ連弾曲『6つの古代碑銘』で牧神をテーマに扱っておる

よほどこの作品が気に入っておったのじゃな

関連ページ:マラルメ「牧神の午後」の日本語訳

牧神パーンは笛にまつわる伝説があり、その伝説がもとになって名前が付けられたパンフルートと呼ばれる楽器がシンボルとして扱われています。『牧神の午後への前奏曲』には牧神を表現する楽器としてパンフルートの代わりにフルートが使われ、楽曲の中で非常に重要な役割を担っています。クラシック音楽の中でパンフルートはフルートに置き換えられることが多く、モーツァルトのオペラ『魔笛』でも登場人物パパゲーノが持つパンフルートはフルートに置き換えられています。

笛の演奏をエローメノスの羊飼いダフニスに教えるパーンの彫像

笛の演奏をエローメノスの羊飼いダフニスに教えるパーンの彫像

ダフニスって絶世の美女とうたわれた女性ですよね
パーンの表情が下心みえみえに見えるのは気のせいかな…?

クラーニャ

『牧神の午後への前奏曲』はロシアのバレエ団バレエ・リュスによってバレエ『牧神の午後』にされました。このバレエには曲の終盤に牧神の自慰行為を露骨に再現した振付が含まれていました。このような性表現は前代未聞のことで、初演ではあまりにも革新的な舞台に招待客は唖然とし、幕が降りてもなお2、3分もの間、客席は沈黙に包まれたままであったといいます。

しかしこれは新聞を巻き込んだ大きなスキャンダルに発展してしまいます。2回目の公演には警察も立ち会い、表現も若干マイルドに抑えられました。この騒動はすぐに収まりましたが、このスキャンダルのおかげで公演のチケットは完売となり作品は大成功を収めました。

牧神を演じるニジンスキー

牧神を演じるニジンスキー
バレエ・リュスの花形ダンサーで、主演を担当するほかに振付も行った

ニャンチーニ教授

現在ならまだしも、性の表現に厳しかったドビュッシーの時代では刺激が強すぎたようじゃな