クラーニャ
『亜麻色の髪の乙女』について学ぼう!
ピアノ曲『亜麻色の髪の乙女』はクロード・ドビュッシーが47歳の時に作曲した『前奏曲集第1巻』の第8曲です。演奏時間は2分弱と短め。24曲作曲された前奏曲の中で、最も人気があります。
『亜麻色の髪の乙女』はドビュッシーが20歳の頃に作曲した未発表の歌曲がもとになっています。
この歌曲は19世紀フランスの詩人ルコント・ド・リールの詩「亜麻色の髪の乙女」に曲を付けたものでした。
詩の内容は以下の通りです。
亜麻色の髪の乙女(スコットランドの美女)
ムラサキウマゴヤシの花畑で
歌うのは誰? この冷たい朝に。
それは亜麻色の髪の乙女
サクランボ色の唇をした美しき乙女
夏の日がさし、ひばりとともに
愛の天使が歌った神の気配をたたえた君の口もと。
ああ可愛い君、キスしたくなるほど!
長いまつげ、きれいなお下げの乙女よ
花咲く草原で、おしゃべりしないかい?
夏の日がさし、ひばりとともに
愛の天使が歌ったノーと言わないで、つれない君よ!
イエスと言わないで! ああ君の
大きな瞳、薔薇色の唇を
ずっと見つめていたいから。
夏の日がさし、ひばりとともに
愛の天使が歌ったさようなら鹿よ、さようなら兎、
そして赤い山ウズラにもさようなら!
君の髪の亜麻色に口づけして
この身に捺したい、その唇の緋色を!
夏の日がさし、ひばりとともに
愛の天使が歌った
この歌曲はドビュッシーの恋人で人妻だったバニエ夫人(マリー=ブランシュ・バニエ)に贈られました。
バニエ夫人はドビュッシーより14歳年上で、美声と美貌を持った歌姫です。

ジャック=エミール・ブランシュ作のバニエ夫人の肖像
ニャンチーニ教授
ドビュッシーは18歳の時に彼女と出会い、彼女の魅力に魅了され、恋文を熱心に送り不倫関係に至ります。
ドビュッシーは40曲ほどの歌曲を20歳前後の時に作曲していますが、その半数以上がバニエ夫人に贈られました。
クラーニャ
曲名にある亜麻色は植物の「アマ(亜麻)」に由来する色です。亜麻は古代から中東やユーラシア大陸西域で栽培され、現在は各大陸で広く栽培されています。
亜麻の茎の繊維はリネンとして織物の原料に、種子は食用にされ重宝されてきました。種子からは亜麻仁油(アマニ油)が採れ、食用のほかに、木製品の仕上げなどに用いられています。

アマ(亜麻)
ニャンチーニ教授

西欧の亜麻色 #EEDC82
西欧における亜麻色は、淡黄色を帯びた灰色であり、わらの色または紡がれていない麻の色に由来しています。英語ではFlaxやFlaxen、フランス語ではlinと呼ばれます。

亜麻の繊維
クラーニャ
ニャンチーニ教授

日本の亜麻色 #C7B897
対して日本における亜麻色は黄色がかった薄茶色。亜麻が日本で栽培されるようになった明治期以降に登場した新しい色で、歴史は深くありません。亜麻を紡いだ糸の色に由来しています。色は漂白していない生成りのリネン生地に近いです。
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