名曲解説:リストの《献呈》

《献呈》はフランツ・リストがシューマンの歌曲集《ミルテの花》の第1曲《献呈》をピアノ独奏用に編曲した曲です。

演奏時間は3分50秒ほどで短い曲ですが、印象に残りやすい素敵な曲です。

作曲の経緯・動機

この曲のベースになった《ミルテの花》は、シューマンが1840年に作曲した26曲からなる歌曲集です。

シューマンが妻クララと結婚するさい、妻へと贈る結婚記念の曲として作曲されました。

リストがこの曲をピアノ曲に編曲した理由は定かではありません。リストは他にも膨大な量の編曲作品を残しているので、それほど深い意味は無いのかもしれません。

ちなみにクララ・シューマンはリストが『献呈』を編曲したことを不満に思っていたようです。夫との素敵な思い出を、壊されたくなかったのでしょう。リストは編曲する際、過剰にアレンジを加える癖がありますしね。

曲名の由来・意味

ミルテとは日本語で「ギンバイカ」、花の名前です。この花はヨーロッパにおいて、愛を象徴する花として扱われてきました。そして愛や不死、純潔を象徴するとされ、結婚式の飾り物や花嫁のブーケに使われています。

これは古代ギリシアでミルテが「豊穣の女神」と「愛と美と性の女神」に捧げる花だったことに由来しています。また古代ローマにおいては「愛と美の女神」に捧げる花でした。

つまり歌曲集《ミルテの花》はブーケのような意味をもち、《献呈》の名が付けられた第1曲は、さながら「メッセージカード」のような存在といえますね。

曲の視聴

では曲を聴いてみましょう。

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《ミルテの花》の各曲にはゲーテ、ハイネ、バイロン、リュッケルトなど、一度は聞いたことのあるような有名な詩人の詩が付けられました。

第1曲の《献呈》にはリュッケルトの詩が当てられています。日本語訳があるので紹介します。

きみこそはわが魂よ、わが心よ、
きみこそはわが楽しみ、わが苦しみよ、
きみこそはわが生を営む世界よ、
きみこそはわが天翔ける天空よ、
きみこそはわが心の悶えを
とこしえに葬ったわが墓穴よ。

きみこそはわが安らぎよ、和みよ、
きみこそは天から授かったものよ、
きみの愛こそわが価値を悟らせ、
きみの眼差しこそわが心をきよめ、
きみの愛こそわれを高めるものよ、
わが善い霊よ、よりよいわが身よ。

(志田麓訳、『シューマン歌曲対訳全集』、音楽之友社より)

婚約の時にこの曲をもらえたら嬉しいですよね。想いがたくさん詰まってますもん

クラーニャ